「香りを操る楽しさ」と「表現の奥行き」が伝わる調香の時間を

香りは、目に見えないのに、心にそっと寄り添ってくれる不思議な存在です。
日々の中で「なんとなく疲れたな」「気分を切り替えたいな」と思うとき、ほんの一滴のアロマが気持ちを和らげてくれることがあります。

今回のレッスンでは、その「香りを自分でデザインする」という体験を、皆さまに楽しんでいただきました。調香は、絵の具を混ぜ合わせて色を生み出すように、精油の一滴一滴を重ねて、自分だけのハーモニーを見つけていく作業です。

心の奥にある気持ちを映し出すような香りに出会えたとき、生徒さんの表情がふっと和らぐのが印象的でした。まさに、香りは「もうひとつのカウンセリング」なのかもしれません。

今回は、レッスンでもお伝えした香りの歴史の背景について。

そして、レッスンでも弾んだお着物でのお出かけ用にと話題も盛り上がり、私自身もブレンドを考えてみました。是非参考にしてください♪

1. 調香レッスン:シャネル No.5 の物語

香水史に名を刻む伝説的な香り ― シャネル No.5。
その名に込められた「5」という数字には、ガブリエル・シャネルの確信と美学が宿っています。彼女は香水を発表する際、試作品の中から「5番目」を選び、そのまま名にしました。「私は数字の5に幸運を感じるの」と語った彼女の直感が、世界を変えたのです。

そして No.5 は、ただの香水ではなく、調香の歴史に革命をもたらしました。それまでの香水は、花そのものの香りを再現する「ソリフローラル」が主流。しかし No.5 は、アルデヒドを巧みに取り入れ、抽象的で洗練された「女性そのもの」を描き出した最初の香水でした。透明感と官能が共存するその香りは、モダンで独立した女性像を象徴し、以降の香水業界に「香りで生き方を表現する」という新しい潮流を生み出したのです。

2. 香りの提案:着物で迎える秋のラグジュアリー

タイトル:〈秋麗の雅 -Akiurara no Miyabi-〉

しっとりとした秋の夕暮れ、絹の裾が風に揺れ、街の灯りが静かに瞬く。そんな時に似合うのは、華やかさと深みを兼ね備えたブレンドです。

ローズとリリーが織りなす優美な花の香りは、着物姿にふさわしい気品をまとわせ、

ジャスミンが艶やかな余韻を添え、秋の空気に溶け込みます。

ミルラの樹脂の温もりは、伝統を重んじる静謐さを呼び覚まし、

パチュリーが大地のような落ち着きを与えてくれます。

そこにマンダリンの瑞々しい光が差し込み、全体を軽やかに調和させるのです。

纏う人の仕草や呼吸に合わせて表情を変えるこの香りは、秋の夜のラグジュアリーなひとときを、より格調高いものへと導いてくれるでしょう。

〈秋麗の雅 -Akiurara no Miyabi-〉 オードトワレ レシピ

材料(10mlボトル分)濃度10%

無水エタノール … 10ml

精油(合計20滴)

ローズ・オットー … 3滴

リリー(アブソリュート) … 1滴

ジャスミン(アブソリュート) … 3滴

ミルラ … 2滴

パチュリー … 4滴

マンダリン … 7滴

作り方

ガラス瓶に精油を加えてよく混ぜます。

アルコールを加え混ぜます。

蓋をして1〜2週間ほど冷暗所で熟成させると、香りがまろやかに調和します。

使用前に軽く振ってから、手首や首筋、帯周りの空気にひと吹きしてください。

香りの表情

トップノート:マンダリンの果実の光とローズの華やぎ

ミドルノート:リリーとジャスミンが織りなす優美な花の余韻

ベースノート:ミルラとパチュリーの落ち着きが、着物姿に奥ゆかしい重厚感を添える

秋の夜にふさわしい、和と洋のエッセンスを織り交ぜたラグジュアリーな香りに仕上がります。

香りブレンド体験は、随時ご体験いただけます。

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