植物の力を、科学と五感から学ぶ一日 ~武田薬品工業 京都薬用植物園見学&講演会2026~
先日、IUNT主催の「武田薬品工業 京都薬用植物園見学&講演会2026」に参加してきました。
今回の学びは、植物由来の成分が肌にどのように働きかけるのかを科学的に知る講演会と、実際に植物の姿を観察する薬用植物園の見学会。
植物の持つ力を、知識だけでなく五感を通して感じられる、充実した一日となりました。
「白」の文化から、美白成分のサイエンスへ
講演会のテーマは、
「植物の力で肌はどう変わるか ― 美白成分のサイエンス」
講師は、武庫川女子大学の仁木洋子先生。
講演は「色の白いは七難隠す」という言葉から始まり、日本人が古くから抱いてきた「白」に対する価値観や、美意識の歴史へと広がっていきました。
古代には神聖さや吉兆の象徴でもあった白。
平安時代には、身分や美意識とも結びつき、『源氏物語』や『枕草子』などの文学作品にも当時の美意識がうかがえます。
江戸時代になると、化粧文化が庶民にも広がり、白く装うことだけでなく、肌そのものを整えることにも関心が向けられていきました。
小豆、白檀、米麹、日本酒など、身近な植物や発酵の恵みを美容に取り入れてきた先人たちの知恵。
現代のスキンケアにもつながる、興味深い歴史を知ることができました。
肌の色を決める仕組みと植物由来成分
私たちの肌の色は、メラニン色素だけでなく、ヘモグロビンや皮膚内部での光の反射など、さまざまな要素によって決まります。
その中でも大きな役割を担うのがメラニンです。
メラニンの生成には、チロシナーゼという酵素が関わっています。
今回の講演では、このメラニン生成の仕組みと、美白有効成分がどのように働きかけるのかを学びました。
例えば、
- コウジ酸:チロシナーゼの働きを抑える
- エラグ酸:チロシナーゼの活性に必要な銅イオンに働きかける
- マグノリグナン:チロシナーゼの成熟を抑える
- カミツレエキス:メラノサイトへの情報伝達に関わるエンドセリンの作用を抑える
それぞれ異なる仕組みでメラニン生成に働きかけることが、とても興味深く感じられました。
一方で、植物由来だからといって、すべてが安全というわけではありません。
美白成分の安全性に関する事例にも触れ、成分の作用を理解すると同時に、そのリスクや適切な使用方法を知ることの重要性も再認識しました。
植物の恵みを生かすためには、経験や伝統だけでなく、科学的な根拠を学ぶことも欠かせません。
これは、私たちアロマセラピストにとっても共通する大切な姿勢だと思います。
薬用植物園で出会った植物たち
講演会で植物成分について学んだ後は、実際の植物を観察する時間。
普段、精油やハーブティー、化粧品などを通して親しんでいる植物も、その生きた姿を目の前にすると、また違った魅力を感じます。
収穫期を迎えたローゼル
ちょうど収穫の時期を迎えていたローゼル。
鮮やかな赤い萼が印象的な植物です。
ハイビスカスティーとして親しまれるローゼルですが、ジャムやシロップなど、季節の手仕事にも活用できます。
育てる楽しみ、収穫する喜び、そして暮らしに取り入れる豊かさ。
植物を知識として学ぶだけでなく、日々の暮らしの中で楽しむことも、ハーブの大きな魅力だと感じました。
美しい紫色の花を咲かせるトリカブト
ひときわ目を引いたのは、鮮やかな紫色の花を咲かせるトリカブト。
その美しい花の姿に、思わず見入ってしまいました。
一方で、トリカブトは強い毒性を持つ植物としても知られています。
特定の種類の根は、適切な加工によって毒性を低減し、漢方薬の生薬として利用されてきました。
植物園の解説にあった「薬毒同源」という言葉も印象的でした。
美しい花を咲かせる植物が、強い毒性を持ち、同時に医薬の歴史にも関わっている。
植物の力には、恵みと危険性の両面がある。
そのことを改めて考えさせられました。
精油を扱う際にも、成分の特徴や使用量、対象となる方の状態を理解することが大切です。
自然のものだから安心、と安易に捉えない姿勢を、これからも大切にしていきたいと思います。
甘い香りに心が和むバニラ
もう一つ印象に残ったのが、バニラ。
お菓子や香料として親しまれるバニラですが、実際にはラン科のつる性植物です。
緑色の細長い果実が実る姿を観察することができました。
私たちがよく知る甘い香りは、収穫後の加工によって引き出されます。
バニラの甘い香りには、どこかほっとするような、心が落ち着く魅力があります。
香りの成分を学ぶことも大切ですが、香りに触れたときに自分自身がどう感じるのか。
そんな感覚もまた、アロマテラピーの大切な入り口なのだと思います。
植物を知ることは、人を知ることにもつながる
今回の講演会と植物観察会を通して、改めて感じたのは、植物の世界の奥深さです。
長い歴史の中で、人々は植物を食べ物として、薬として、美容や暮らしの道具として活用してきました。
その知恵は、現代の科学によって新たな視点から解き明かされ続けています。
また、植物にはそれぞれの生育環境があり、季節によって異なる姿を見せてくれます。
実際に植物に触れることで、テキストや資料だけでは得られない気づきが生まれます。
そして、植物を大切に育て、守り、次の世代へとつないでいく方々の存在にも思いを寄せる機会となりました。
アロマセラピストとして、精油の作用やトリートメント技術を学ぶことはもちろん大切です。
けれど、その先には、植物そのものを理解すること、身体の仕組みを知ること、そして目の前の方の心と身体に丁寧に向き合うことがあります。
知識を深めることと、五感を通して感じること。
どちらも大切にしながら、学び続けていきたいと思います。
今回得た学びも、ivy-roomのサロンでのケアやアロマセラピスト養成講座の中で、少しずつお伝えしていけたらと思っています。
植物の恵みを、正しく、そして豊かに暮らしへ。
貴重な学びの機会をいただき、ありがとうございました。
アロマサロン・スクール ivy-room
