「免疫は強ければいい」ではない。身体の精巧な仕組みから考える     アロマテラピー

昨日9月16日、西宮市で毎年開催されている「ライフサイエンスセミナー」に参加してきました。

今年で第42回を迎えるこのセミナー。

今年のテーマは、アロマセラピストとしても非常に興味深い**「免疫」**についてです。

今回から全5回にわたって、大学の先生方から最新の免疫研究について学びます。

今年は「免疫」を5つの角度から学びます

今回の全5回の内容は、

第1回 免疫機能の基本的な仕組み
武庫川女子大学 薬学部 名誉教授 吉田雄三先生

第2回 制御性T細胞の免疫の仕組みにおける役割
大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 田中淳先生

第3回 アレルギーの正体に迫る:新しい免疫細胞 ILC2とは
大阪大学大学院医学系研究科・医学部 生体防御学教室 茂呂和世先生

第4回 慢性炎症と臓器連関による多病の進展機序
千葉大学大学院教授・医学薬学府長 真鍋一郎先生

第5回 免疫老化と高齢者の病態への関与
京都大学大学院医学研究科 がん免疫総合研究センター 佐藤有紀先生

という、とても興味深い内容になっています。

制御性T細胞、アレルギー、慢性炎症、そして免疫老化まで。

アロマセラピストとして身体に触れる仕事をしている私にとっても、これからの講義がとても楽しみです。

第1回は「免疫機能の基本的な仕組み」

9月16日の第1回では、武庫川女子大学薬学部 名誉教授の吉田雄三先生から、まず免疫の基本について学びました。

私たちの身体には、皮膚や粘膜という最初の「バリア」があります。

それを突破して入ってきた異物に対して働くのが免疫です。

そこには大きく分けて、

「自然免疫」と「獲得免疫」

という仕組みがあります。

自然免疫では、食細胞やNK細胞などが異物に対して素早く反応します。

一方、獲得免疫では、B細胞がつくる抗体による「体液性免疫」や、キラーT細胞などが関わる「細胞性免疫」が働きます。

さらに、一度出会った抗原を記憶する「免疫記憶」という仕組みもあります。

ワクチンも、この免疫記憶という身体の仕組みを利用したものです。

こうして改めて学んでみると、

私たちが意識していないところで、身体は常に外界を見分け、判断し、必要な反応を起こしている。

その精巧さには本当に驚かされます。

「攻撃する」だけではない免疫

そして今回、特に印象に残ったのが「免疫寛容」という仕組みでした。

免疫には異物を排除する力が必要です。

しかし、ただ強く攻撃すればよいわけではありません。

私たちの免疫細胞には非常に多様な「見分ける仕組み」がある一方で、自分自身を攻撃してしまう可能性もあります。

そこで身体には、自分自身を攻撃する免疫細胞を排除したり、その働きを抑えたりする仕組みが備わっています。

その一つが**制御性T細胞(Treg)**です。

まさに免疫反応の「ブレーキ役」ともいえる存在です。

そして、この制御性T細胞などによる末梢性免疫寛容の仕組みに関する研究によって、坂口志文先生、Mary E. Brunkow氏、Fred Ramsdell氏が2025年のノーベル生理学・医学賞を受賞されました。ノーベル賞委員会は、制御性T細胞を、免疫細胞が自分自身の身体を攻撃することを防ぐ重要な存在として説明しています。

次回9月30日の講義では、まさにこの**「制御性T細胞の免疫の仕組みにおける役割」**について、さらに詳しく学びます。

とても楽しみです。

免疫は「高める」だけではない

今回の講義を聞きながら、アロマセラピストとして改めて考えたことがあります。

私たちは日常で、

「免疫力を高める」

という言葉をよく耳にします。

けれど、身体の仕組みを知れば知るほど、免疫は単純に「強ければ強いほどよい」というものではないことが分かります。

必要なときには反応する。

一方で、必要以上の反応にはブレーキをかける。

そして自分自身と異物を見分ける。

大切なのは「強さ」よりも、適切に調整されていることなのかもしれません。

これは、今回の学びの中で私がとても印象に残ったことでした。

では、精油と免疫の関係は?

そして、ここからはアロマセラピストとしてとても興味が湧くところです。

精油やその芳香成分についても、炎症反応や免疫系に関係するさまざまな研究が行われています。

その中でも、ホメオスタシスにも期待される、精油の免疫調整作用を検討した研究レビューでは、サイトカインなど免疫反応に関係する指標への作用が報告されています。

ただし、ここはとても大切なところ。

現時点では、こうした研究の多くは細胞実験や動物実験などを含み、人に精油を使えば免疫機能が整う、病気を予防できる、治療できる、と結論づけられる段階ではありません。 臨床研究が非常に少なく、研究によって結果が一致しないことも指摘されています。

だからこそ私は、アロマセラピーを医療の代わりとして考えるのではなく、

「香りやタッチを通して、心と身体がゆるむ時間をつくること」

を大切にしています。

人を対象としたアロマテラピー研究では、ストレスや不安への影響が研究されており、一定の可能性が報告される一方、研究方法や質にはまだ課題があります。

「精油が免疫を治す」のではありません。

けれど、

香りを心地よいと感じること。
呼吸がゆっくりになること。
人の手に触れてもらって安心すること。
緊張していた身体が少しゆるむこと。

そんな時間を届けることも、アロマテラピーの大切な役割ではないでしょうか。

身体を知るほど、アロマテラピーは面白くなる

今回の免疫の講義を受けて改めて感じたのは、

人間の身体は、「何か一つを高めれば健康になる」というほど単純ではない

ということです。

アクセルを踏む仕組みがあれば、ブレーキをかける仕組みもある。

攻撃する細胞がいれば、それを抑える細胞もいる。

そして、それらが絶妙なバランスを取りながら、私たちの身体を守っています。

だからこそ、アロマセラピーでも「この精油にはこの作用がある」という知識だけで終わるのではなく、

その方の身体では今、どんなことが起こっているのだろう。
その方の心と身体にとって、今どんな時間が必要なのだろう。

そんな視点を持てるセラピストでありたいと思います。

これから、

制御性T細胞、アレルギー、慢性炎症、免疫老化……

と学びは続きます。

最新の生命科学を学びながら、それをそのまま「精油の効果」に結びつけるのではなく、身体をより深く理解するための学びとして、アロマセラピーにどう活かせるのか。

そんな視点で、今年も全5回しっかり学んでいきたいと思います。

そして、このブログでも皆さまに分かりやすくお伝えしていきますね。

※本記事はセミナーでの学びと、公開されている研究情報をもとに、アロマセラピストとして感じたことをまとめたものです。精油・アロマセラピーによる疾病の治療・予防を目的としたものではありません。体調に不安がある場合や治療中の場合は、医師などの専門家にご相談ください。